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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

万三郎は吃驚して、

「危ない、――」

われ知らず駆けよろうとした。

「斬れ、斬ってしまえ三郎」

うしろで声がした。休之助が斧田といっしょにこっちへ来るのが見えた。

半兵衛は倒れたまま、地面に長くのびて、背に波をうたせながら、喘いでいた。

「なにをぐずぐずしているんだ、なぜ斬らないんだ」

休之助がそこへ来てどなった。

「動けなくなった人を斬れやしません」

「そいつは敵だぞ」

「しかしもうなにもできなくなった人です」

「ではおれが片づけてやる」

休之助が前へ出た。

「待って下さい、いけません」

「きさま、――また悪い癖がはじまったな」

「この人は斬らせません」

万三郎はきっぱりと云った。

「この人は不幸な人です、これまでも実際にはなんにもしなかったし、これからはなおさらなにもできやしません、翼の折れた鷲のようなものです、この人に構わないで下さい」

「――おかしなやつだ」

半兵衛がそう云った。

十二

「おかしな男があったものだ」

地面にのびたまま、そう云いながら、半兵衛はくすくす笑いだした、が、それは笑うのではなく、泣いているのだということが、すぐにわかった。彼は泣きながら、なお云った。