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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
六兵衛は深川八幡前に住んでいた。もう七十にちかい老人であるが、女衒としては、その冷酷と無情と、同時に女をみる鑑識の慥かさとで、その世界では知らない者がないくらいだった。
松吉は六兵衛の家を訪ねた。
「運だったわねえ、――」
とおちづは化粧を終って、肌を入れながら、大人びた口ぶりでそう云った。
「あたし姐さんを見たときすぐに、ああこの人はあたしを助けてくれる、って思ったわ」
「とびついたじゃないの」
と松吉は微笑しておちづを見やった。
「いきなりあたしにとびついて、助けて下さい、ってどなったじゃないの、――あたし吃驚してとびあがりそうになったわ」
「ごめんなさい、あたし夢中だったんです、この人に助けてもらえなければ、もうだめだって気がしたんです」
「そう云われると辛いわ」
「あら、なあぜ姐さん」
「だって助けたと云ったって、このまま堅気にさしてあげられるわけじゃなし、やっぱり芸を覚えて稼いでもらわなくちゃならないからねえ」
「そんなこと覚悟のうえよ」
おちづは向き直って、ひどくまじめな顔つきになって云った。
「あたし鬼六の処へ来るまでに考えたの、あたしのような者はお店の女中奉公もできないし、といって十五にもなってみれば、いつまで街をうろついてもいられない、なにか生きてゆくしょうばいを身に付けなければならない、それならいっそ