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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

――つまり岡さまの助力で「ちづか」を開業したのであるが、今でも舟は三艘あり、客に求められれば舟を出すこともできる。船頭は向う岸の「船宇」から借りるわけで、岡さまが「升屋」へゆくときには、たいていのばあい舟であった。

「――おお袖、おお袖、お袖はたいて、おさらーい」

おちづは熱心にお手玉をやっていた。

「うまいのねえ、ちいちゃんは」

お民は感に耐えたように、

「あたしおお袖のとき、どうしてもうまく集まらないのよ」

「せんはもっとうまかったわ」

おちづは鼻をうごめかす。

「町内のお絹ちゃんだってあたしにはかなわなかったのよ」

「お絹ちゃんて、――」

「酒屋の子よ、お金持だもんだからいつも威張りくさってたわ、あらいけない、――さ、こんどはたあちゃん」

「あらあたし」

当然の番でもお民はもうにこにこする。おちづはそれをいかにも可愛そうに眺めながら、おかみさんに話しかけた。おかみさんは大きな長火鉢の前に坐って、酒の燗をつけたり、出入りする女中たちになにか命じたり、また絶えず注文の品を書いたりしていた。

「ねえおかみさん、旦那の岡さまって、神さまみたいだわね」

「神さまだって、――」