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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
「済まなかったね、そんなに怒るならいいよ」
こう云って万三郎は黙った。
「なんというやつだ、本当に」
権兵衛は暫くぶつぶつ云っていた。
かれらは着たままごろ寝をするらしい、片方の権兵衛がなにか慰めるようなことを云い、でかい権兵衛の横になるらしい物音が聞えた。
万三郎は待っていた。
首をすくめたり、声を忍ばせて笑ったりしながら、――そうして、やがて二人の権兵衛が、気持よくうとうとし始めた頃をみはからって、拳骨でどんどん戸を叩き、破れるような声で叫びたてるのであった。
「権兵衛さん権兵衛さん、ちょっと起きておくれよ、どうしてもだめなんだ、喉が渇いてどうにもがまんができないよ、権兵衛さん、小さい権兵衛さん、ちょっと起きて茶を頼むよ、ねえ、小さい権兵衛さん頼むよ」
そして戸をむやみに叩き続けた。
三
「畜生、殺してくれるぞ」
でかい権兵衛だろう、そう喚いて、はね起きるけはいがし、仕切戸のところへ来て、悲鳴をあげるように叫びだした。
「きさま、いま、なん刻だと思う、もう夜なかだぞ、夜なかを過ぎようとしているんだぞ畜生、いったいなんのためにそう騒ぐんだ、どういうわけでおれたちを寝かさないんだ、なんのためだ」