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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

四

四

「いいわ、半ちゃん、もうこんな話よしましょう」

おちづは姉が弟をなだめるように、そっと半次の肩を押えながら云った。

「もう少し経てば、あんたにもわかってもらえるわ、もし芸妓になることが間違っているにしても、あたしに間違いがなければいいんだし、それは見ていてもらうよりしようのないことだわ、これからはまた、いつだって逢いたいときに逢えるんだし、あたしが変るか変らないかは、半ちゃんの眼で見ていてくれればいいのよ」

「おいらのことなんぞ、放っといてくれ」

半次はそっぽを向いた。

「おらあ自分のことは自分の好きにするよ、それに、すぐまた江戸を出てゆくんだ」

「――江戸を出てゆくって」

「中谷さんや花田さんたちといっしょにゆくのさ、ことによると生きて帰れるかどうかもわからねえんだ」

「――あたしを脅かすのね」

おちづはじっと半次の眼を見つめた。半次はおとなびたふうに唇を曲げた。

「なんのためにおめえを脅かすんだ」

「だって半ちゃん、あんたたち紀州から帰って来たばかりじゃないの」

「おめえにゃあわからねえさ」

「嘘よ、嘘だわそんなこと」

そのとき二人のうしろに足音がし、万三郎の声が聞えた。