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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「家をあけたことは悪うございますけれど」

とおちづは勇ましく答えた。

「でも人間ひとりの命にかかわるばあいですから、話をすれば堪忍してくれると思います、そして、――姐さんは旦那のなさる事はなんにも知りませんし、旦那の岡さまも、あたしがこんなことをしたとは御存じないんですから、なにも面倒なことは起こらないと思います」

「――そうかもしれない」

徹之助はなお不得心なようすで、おちづの眼をじっとみつめながら云った。

「だが芸妓にならずとも、たとえば私の家に行儀見習いとして奉公し、半次は半次でしかるべき職を身につける、という方法もあるではないか」

「有難うございますけれど」

とおちづは微笑した。

「あたし姐さんに恩がありますから、――悪い人買いの手で、どんな辛いめにあわされるかわからないとき、姐さんに助けられた恩がありますから、いまここで姐さんの家を出るわけにはいかないんです」

「それは違う、おまえがそれを恩義だと思うのはよいが、もともと人間を金で売り買いするというのが道に外れたことで、それだけの金を返しさえすれば恩も義理もない筈だ」

「――そうでしょうか」

おちづはまともに徹之助の顔を見た。