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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

万三郎はぐいと酒を呷った。

「それでいつも思うんですよ、木は木、草は草とひとまとめにしてしまったらいい、魚なんぞもこれは海魚、これは川魚、これは湖水魚、それでいいと思うんですがね」

「人間も名前なんかとって、男は男、女は女とひとまとめにしてしまいますか」

ばかな会話である。

万三郎も暢気だが、兵馬も暢びりした性分で、こんな話になると二人とも飽きないのである。――川魚の塩焼に芋の甘煮で、万三郎はあまり強くないが、二人はいい心持そうに盃を重ねた。

そのうちに吸物が出た。

「こんどは先に訊きますよ」

椀の蓋を取って、中を見ながら万三郎が云った。

「なんですかこの野菜は」

「――うん、洒落れていますね」

「なんという物です」

「知らないんですか」

兵馬は中のみを箸で摘んだ。

「――蕨ですよ」

わらびと聞いて、万三郎はくしゃんと顔を歪め、恐ろしい物をでも見たように、慌てて椀へ蓋をした。

「どうしたんです、嫌いですか」

「嫌いです、大嫌いです」

万三郎は「蕨めし」の失敗を思いだしたのである。彼はさらに力をこめて云った。

「私は一生、これだけは喰べません、見るだけでぞっとするほど嫌いです」