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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
三
こういう手合は、相手が強いとわかると猫のようになるものである。半兵衛は二人をぐっと睨んでおいて、かよのほうへ振向いた。
「多分にはいりません、駄賃に少しいろを付けて遣って下さい」
「ふしぎな処でお会いするのね」
かよは云われたものを紙に包み、それを八兵衛の手に渡しながら半兵衛を見た。
――こっちのほうが難物だ。
と思ったのである。半兵衛にもそれがわかったのだろう、ちょっと眼を伏せて、ぶきような、云い訳をするような調子で云った。
「たぶん貴女もそうだろうが、私も花田さんのあとを追って来たのだ」
「――なんのためにですの」
「それも貴女と同じだと思う」
「――わかりませんね」
「私のほうが先に来たんだ」
と半兵衛は眼をあげた。
「まる一日早かったので、貴女の知らないことを知っている、というのは、昨日の朝、猿橋の宿でちょっとした騒ぎがあった、例の紀の字の人数と、花田さんたちとが斬合いをやって」
「万三郎さまが、あの方が」
「いや大丈夫、――」
かよの驚く顔を見て、半兵衛は胸を刺されでもしたように眉をしかめた。
彼はかよを恋していた。これまでにもわかっているとおり、中年の灼けるような、殆んど妄執にちかい恋であった。