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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
などといきまいたので、みんながわっと笑いだした。
徹之助は酒は飲まないたちであるが、今夜はかなり盃を重ねたとみえ、まっ赤に酔った顔で一座の人々を眺めまわしていた。感慨無量といった眼つきである。
――武運に恵まれたのだ、あれだけの仕事をして、欠けたのは甲野家の二人と林市郎兵衛、あとはみな無事でここに集まっている。
そんなふうに呟いているようであった。
――休之助は亡妻の妹と結婚し、立派に甲野の家名を復活した、万三郎も、――いや、あいつは相変らずおかしなやつだ、かよという娘も妙なものだ、うん、しかしどこかしら似合っている、おかしなやつと妙な娘だが、案外あれで似合いの夫婦かもしれない。
徹之助は満足そうに微笑した。
九時に祝宴は散会した。帰り支度をしているとき、かよが万三郎に耳うちをした。
「いってお別れをしていらっしゃいよ」
からかうような眼つきである。
「――誰に」
「わかっているじゃありませんか、つなさんによ」
とかよは云った。
「その代りあの方と口をきくのはこれ限りよ、わたくしやきもちやきですからね」
五
吉岡の家は湯島聖堂裏の高台にあった。
養父の伊吾と妻女は、すでに小梅の控え屋敷のほうへ隠居し、その家には中間二人、下僕、下婢などが残っているばかりだった。