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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

万三郎は自分の道具を持ってさっさと外へ出た。

「野郎、逃げるか」

などと喚きながら、五人もばらばらととびだして来た。万三郎は「ぶっかけ」と書いた軒行燈の下のところへ道具を置き、頬冠りをして往来のまん中に立った。

「権あにいとか云ったな」

彼は五人を見まわした。

「拾い屋なんてものは道の上や芥箱をあさって、雀の涙ほどの稼ぎをするしがねえしょうばいだ、誰のお世話にもならねえ人の捨てた物を拾うのに、繩張りもくそもあるか」

「大きな口を叩くな野郎」

権あにいが眼を剥いた。

「どんなしょうばいだってそれぞれの繩張りがあり取締りというものがある、乞食にだってあるんだ、たとえ人の捨てた物を拾うにしたって、それでこんにちを食ってくからには冥利てえことを知らなくちゃならねえ」

「笑わせるな、冥利とはどういう冥利だ、おめえにかすりを払えってことだろう」

「野郎、喧嘩を売る気か」

「念を押すこたあねえや」

万三郎は鼻で笑った。

「きさまらのようなけだものには理屈を云ったって始まらねえ、これから弱い者を泣かせねえように性をつけてやる」

「ほざくなわかぞう」

権あにいが殴りかかった。

往来はもう人だかりがしていた。