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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
「それを信じろというのか」
「休之助さまなら信じて下さいますわ」
万三郎はどきっとした。そんなところへ次兄の名が出ようとは、まったく思いがけなかったのである。女は大胆に万三郎を見まもりながら云った。
「あたしが万三郎さまをずっとまえから想っていた、見ぬ恋にあこがれていたということを、休之助さまはよく御存じなんですから」
「――貴女は兄を知っているんですか」
「云ってしまいますわ」
女は眼を伏せた。すると、みだらなほど嬌めいていた姿態に、ふと一種のしめやかな影がさすようにみえた。
「わたくし甲野家の遠縁の者で、五年まえから甲野の家にいましたの、孤児になったので養われていたんですわ、名前も申上げましょう、木島かよといいますの」
「かよさん、いい名前じゃありませんか」
「そう思って下さる」
女は嬉しそうに微笑した。そうして、それに勇気づけられたように告白を続けた。
彼女はつなと年が同じであった。十三の年からいっしょに育てられて、殆んど姉妹のように仲良く暮していたが、つなの姉のところへ、休之助が婿に来てから、二人の仲はうまくゆかなくなった。つまり休之助を中にしてお互いの感情が対立するようになったのである。