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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
彼は持っていた刀を置き、すっと女の側へ寄った。
かよは身動きもできないようすだった。陶酔するような情熱の中から、あまりに突然よびさまされたので、驚きのために声も出ないというふうであった。
「ちょっと辛抱してもらうよ」
側へ寄ってゆきながら、兵馬が低い声でいった。女は黙って、大きな眼で見あげていたが、ふいに危険を感じてはね起きた。
兵馬は片手で女の肩を掴み、ひき寄せながら当て身をくれた。じつにみごとな技で、女はうっといったまま気絶した。
「楽あれば苦ありですな」
兵馬は女を横にし、裾を直してやってからこっちへ来た。
「さあ帰りましょう」
「しかし私はこんな恰好だが」
「すべてあとのことですよ」
兵馬は廊下から庭へおりた。ふところから新しい草履を二足出し、万三郎に一足を与えた。途中で買って来たのだろう。
――ゆき届いた男だな。
と万三郎は舌を巻いた。
仄かに白く見える菊畑の前をぬけて、植込の庭を裏のほうへまわり、低い生垣を乗り越えると、寺の土塀に沿った道へ出た。
「どうしてわかったんですか」
万三郎が訊いた。
「半次が知らせてくれましてね」
と兵馬は答えた。
彼は半次少年に案内されて来て、暫くようすをみてから「和幸」