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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
こんどはかよは声をあげて、さも可笑しそうにからからと笑い、つなの怒りを楽しむかのように云った。
「それなら云ってあげましょうか」
「でたらめはもう結構ですよ」
「船宿の増六がでたらめかしら」
「――――」
「甲野さんのお家が焼けた明くる朝、あの方が江戸へお着きになったのもでたらめかしら、お浜屋敷へ入ろうとなすって、どこかのちびに注意されてお逃げになり、それから廻り道をして増六へいらしった、――これがでたらめでしょうか、つなさん」
つなの顔色が変った。
「あたし万三郎さまには増六で初めておめにかかりましたわ」
かよは急に舌ったるい口ぶりになり、挑むような、そして極めて思わせぶりな調子で続けた。
「あの方は想像以上にいい殿御ぶりだわ、休さまなどよりずっと御美男で、意地っ張りらしいけれど子供っぽくて、それにずいぶん情が深くっていらっしゃるわ」
「あなたは、――かよさん」
つなはするどく相手を見た。
――そうだったのか。
初めて少しわかってきた。かよは敵なのだ、見えざる敵、あの「朱雀事件」の敵方に付いているのだ。だからこそ万三郎の出府や、増六のことを知っているし、またこんな処へも現われたのだ。