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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
「それで、――重要なこととは」
「云うまでもないでしょう」
休之助はじれったそうに、
「かよの動きから判断すれば、渡辺蔵人が朱雀事件でなにかの役割を果していることは確実です、そう思いませんか」
「少なくとも仮定することはできそうだな」
「間違いなしですよ」
休之助はきっぱりと云った。
「これで初めて、敵の一人がうかび上ったわけです、これまではまるで雲を掴むようだったが、ともかく尻尾だけは押えることができますよ」
そのとおりであった。
これまでの探査では、まだ一人の人物もつきとめることができなかった。それは敵の手段が巧妙であったというよりも、「朱雀事件」の規模が大きく、幕府の機能を充分に利用していた、というところに原因があったようだ。
――増六へ万三郎を訪ねた偽のつなというのはその娘だな。
徹之助はそう思った。
かよという娘が、そうしてかれらに使われているとすれば、小田原河岸の屋敷と、その支配の渡辺蔵人には注目の要がある。特に蔵人という人物を掴めば、そこから敵の正体をひき出す端緒が得られると思われた。
「貴女には渡辺という支配の動静を見張って頂きたいが」
と徹之助は八重に云った。