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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
――これをみれば、なにかわかるにちがいない。
万三郎は幾たびも、あけてみたいという誘惑を感じた。けれども、思いきってあけるだけの勇気は出なかった。
――もう少し待ってみよう。
もう少し待って、それでもつながこなかったら、麹町の兄のようすをみにゆこう、ことによると花田の兄にも不祥事が起こっているかもしれない。その惧れは充分にあるが、もしもそんな事が起こっていたら、そのときこそ包の内容を調べて、自分のとるべき途を考えるとしよう。
万三郎はこう思案をきめた。
すると五日めの宵のことであるが、夕餉のあとの茶を啜っていると、にわかに雨が降ってきた。少しまえから気温が高くなり、むしむしすると思っていたが、まるで夕立のように、大粒の雨がさあっと降りだしてきた。
その雨の音に消されて、あがって来た足音にも気がつかなかったが、ふと人の声を聞いたように思って振返ると、廊下に一人の若い女が立っていた。
万三郎はどきっとした。
部屋からさす行燈の光りの中で、その女が非現実的にみえたのである。にわかに降りだした雨と、その女のそこへきたこととが、超自然な現象のように思えたのであった。