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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

しかし、かれらのようすや、馬がみんな泡を噛んでいるのをみて、休之助はいきなり自分の馬に鞭をくれた。

――追手だ。

彼はそう直感した。

――休むのではなかった。

追手であることには間違いはなかった。数えると七騎いたが、かれらはひっしと追って来た。

単に切手を怪しんだのか。それとも、日光街道と同じように、こっちへも手配りがしてあったものか。いずれにもせよ、捉まればそのままでは済まないだろう。――ただかれらの馬は疲れている。泡を噛むほど、とばし続けて来たとみえるが、こちらは休ませたあとなので、よほどの障害のない限り、逃げきれると思った。

「だが下館へいってはまずい」

休之助はそう呟いた。

「結城にいる仲間と思われてはいけない、道をそらさなければ」

まもなく街道から岐れる道が見えた。そこから右へ、山へ登るらしい坂道がある。かなり細いが馬を入れられないことはない、休之助は思いきってそっちへ馬を向けた。

二段ばかりゆくと坂にかかった。筑波山の西麓で、霜溶けの道に岩がごろごろ突き出ていた。ふり向いてみると、追手は岐れ道を曲って来るところだった。

馬の後脚が滑った。