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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
五
「ばかだな、誰がおどかすもんか、そんなんじゃねえんだ」
五
「こりゃあ内証なんだ、おめえよそへいって話すようなこたあねえだろうな」
「聞かねえほうがいい」
万三郎はぶすっと云った。
「おらあ虎あにいのほかに知り合いはねえし、当分は宝積寺の家へも帰れない、話してえにも相手はいねえんだ、また、――話すなといわれたら、口をふん裂かれたって話しゃあしねえけれど、おらあそんな、内証ごとなんぞ聞かねえほうがいいように思う」
「わかってる、おめえの気性はわかってるよ」
虎造は独りで承知し、ぐっと酒を呷ってから続けた。
「うちの殿さまが、御三家の紀州さまへ出入りしている、ってことを知ってるか」
「いんや知らねえ」
「そうだ、おめえは土地の者じゃあなかったっけな、うん、――そうなんだぜ、お出入りというより、紀州さまとはお友達づきあいみてえなもんだってよ、ほんとだぜ」
「焼けてるぜ、虎あにい」
「おっと有難え、酒がやっとまわってきやがった」
虎造は魚を喰べ、酒を飲んだ。すきっ腹で冷えきったところへ、焼きたての肴に熱燗だからよくきくとみえる、いいきげんに酔い始め、口もほぐれてきた。
「そこで去年からのことだが」