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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
そう話しかけたとき、戸外でとつぜん人の声がした。万三郎は反射的に立ちあがり、隅のほうへと、すばやく身をひそめた。
「夜廻りだよ、慌てるない」
虎造が手を振った。すると戸外から呼びかける声がした。
「まだ起きてるのか、あにい」
「平公か、もう寝るところだ」
「いい匂いがするぜ」
「たなごを釣って来たから一杯やってるところだ、御苦労だな」
なあに、と外の声が云った。
「こいつあいけねえ、とうとう雪になりゃあがった」
そう云いながら去っていった。
「雪だとよ、もよおしてやがったからなあ、こいつは積るぜきょうでえ、おめえ泊るよりしようがねえぞ」
「泊めてもらえるだろうか」
「憚りながらこの家の主人だ、おれが承知だから大手を振って泊んねえ」
大手を振って泊る、とは妙な表現である。万三郎は笑いを耐えて、また火鉢に向いながら云った。
「そうなれば話も悠くり聞けるんだが」
「そうともよ、これからだぜ」
虎造はますますごきげんというようすで、大あぐらをかきながら話を続けた。
話の大部分は、もう万三郎の知っていることであった。古木甚兵衛が紀州公の信頼を得て、両者のあいだになにか大きな仕事(虎造はそれを「大儲け」