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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

四

半次はこう云いながら、おちづをいたわるように抱いて、そっと藁束の上へ坐らせた。

「あたい口惜しい」

「わかってるよ、でも忘れなよ、あんなけだもののことなんぞ忘れるんだ、こんど会ったらもっとひどいめにあわせてやるから」

「口惜しいのはあいつらばかりじゃないの」

「ほかにも誰かいたのか」

「そうじゃない」

おちづは首を振ると、泣きながら半次の膝へ俯伏した。

「自分が口惜しいの、自分で自分が口惜しくってしようがないのよ」

「云ってみな、どうして自分が口惜しいんだ」

「いつもなら、あんなやつら」

とおちづは泣きながら云った。

「あんなやつの二人や三人に、捉まるようなあたしじゃないわ、誰だって捉まえようとでもすれば、がりがりにひっちゃぶいてやったわ、そうだわね半ちゃん」

「そのとおりさ、この界隈でそれを知らねえ者はいやあしねえよ」

「それだのに今夜は」

おちづは身を揉んだ。

「今夜のあたしはだめだったの、三島のやつに胸のところを抱かれたら、躯じゅうが痺れたようになって、どうにも手向いすることができなかったの、手も足も力がぬけちまって、自分の躯が自分のものじゃないみたいになっちゃったのよ」