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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

三

「へえーそうですか」

万三郎は万三郎で呆れた。

「それでつまり、貴女のことも怒っているというわけですね、呆れ返った朴念仁だ」

三

「自分の兄だがまったく朴念仁の金仏だ」

と万三郎は続けた。

「じつは花田の兄ともいつか云いあったんですがね、花田の兄も同じような不人情なこと云いましたよ、――つなさんは自分の始末くらいできる娘だ、仕事が第一だ、第一は仕事だ」

「そのとおりでございますわ」

「なんですって」

「お兄さまたちの仰しゃるのが本当だというのでございますわ」

「ばかな、貴女までがそんな」

万三郎はどしんと足踏みをした。

「それはまあ、貴女がそう云うのは自分のことだからいいかもしれないが、まだ年の若い女の貴女が危険なめにあっているのに、大の男どもが任務が大事だからといって、平気で見殺しにするなんて人間じゃありません、そんなやつは私は大嫌いです、そんな不人情な人間に大事な任務がはたせるわけがありません」

「そんなふうに仰しゃっても、わたくしは少しも嬉しくはございません」

つなは冷やかに云った。

「万三郎さまは、お兄さまたちを薄情とか不人情とか仰しゃる、任務よりも人間の命のほうが大切だと仰しゃる、それはそうかもしれません、あなたは人情に篤くっていらっしゃるかもしれませんわ、ことに、――かよわい女にはね」