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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
「ではなぜ村人を騙すのだ」
「なにも、騙しなんかしねえだ」
「山霊さまというのもか」
休之助は悠くりと云った。
「山霊が哭くなどといったり、村の若者たちがでかけてゆくと、黒装束で現われて、みんな捕えて殺してしまう」
「嘘だ、殺しなんかしねえ」
「しかし帰った者はないぞ、帰ったのは一人だけで、あとの三十人ちかい若者たちはみな行方知れずのままだ」
そう云いながら、休之助は右手を前へ出して、曲者の顔をぴたっと指さした。
「おまえもその一人だ」
「――――」
「どうだ、それに相違あるまい」
曲者は頭を垂れた。
「観音谷の貯蔵庫が、もし幕府御用のものだとすれば、堂々とその旨を布令にする筈だ、下館には石川侯がいる、真壁には代官所もある、どうしてこれらに秘密でするのか、なんのために、そんなうしろ暗い手段を弄するのか」
そして休之助は叫んだ。
「このばか者、どっちが謀反人か、これでもきさまにはわからないか」
五
休之助の一喝は痛烈であった。
――さすがにうまいな。
と万三郎は感心した。曲者はもっとこたえたらしい、云われてみればそのとおりである、一言もないという態で、さらにがくりと首を垂れた。