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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「これはこちたきもんだ」

万三郎は思わず呟いた。すると休之助がこっちを見た。

「なんだって、――」

「いやこっちのことです」

と万三郎は立った。

「では今夜があるから寝ることにします」

そして、納戸口で振返り、もう荷駄は来ないそうだから監視はやめてもいいでしょう、と云った。

その夜は伝次らと九時に会う約束だった。

つなは朝からまたすっかり冷淡になり、でかけるときにもいやにつんとして、

「お大事にあそばせ」

と切り口上で云い、眼ではそっぽを見ていた。万三郎はしょげた顔になり、逃げるように小屋をとび出した。

伝次と秀とは、昨夜の処で待っていた。

「やあ、無事だったな」

万三郎は思わず声をあげた。

「どうかと思って心配していたんだ。気づかれずに済んだんだな」

「しっ、もっと低い声で」

と伝次が手を振った。

「大丈夫でしたが、今日は江戸から来た女が小屋へ現われまして、なかまの顔をそれとなく見てゆきあした」

「――あの女がか」

「そらめ使ってただが、慥かに、誰か人を捜しているようなふうであんした、なあ秀」

「なにがわかるもんだ」

と村の小結は云った。

「女なんてものは筑波山の雲みてえなもんで、変り易くって気まぐれで、なにをどう考げえてるか知れたもんじゃねえだ」