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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
「おれたちには酒を飲むなとか騒ぐなとか云いながら、自分は気にいりの部下を集め、女をひきつけて酒宴をする、此処は料理茶屋ではないんだぞ」
「わかってます、お願いですから、先生」
「あいつはかよどのに、――」
だがもう小屋のなかへ入ったのであとの言葉は聞えなかった。
――危ないところだった。
万三郎はほっと息をついた。
あの二人が止めに来ず、半兵衛があれほど酔ったり昂奮したりしていなければ、忍び姿でもことによると発見されたかもしれない。
――まさに虎穴だ。
万三郎は身ぶるいをした。
明くる朝も、同じ時刻に小屋へ帰り、見取り図へ必要な条項を、詳しく書き加えた。休之助は側で見ていて、
「その繩や藁が焼打ちに使えるじゃないか」
と云った。万三郎もそう考えていたのである。
「この糧秣倉に燈油があるだろうと思うんです。それを藁や蓆にぶっかけてやればまちがいなしですね」
「火薬が使えればもっと簡単なんだが」
「なお調べてみましょう」
つなはなにも云わず黙って話を聞いていた。
朝食のあと横になってから、万三郎はふと、石黒半兵衛の言葉を思い出した。
――あいつはかよどのに。
という終りの言葉である。