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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
それでふと思いだし、
「休さん気をつけて下さい」
と万三郎はどなった。
「石黒半兵衛がいます、彼には手を出さないで下さい、彼とやってはいけませんよ」
休之助の手を振るのが見えた。
万三郎は梯子を登り、毀した窓から庫の中へ入った。中はくすぶった煙がいっぱいで、どこがどうなっているかわからなかった。初めは火を放けた藁を投げ込んだので、中までは入らなかったのである。
彼は煙に咽せて咳きこんだ。
壁に沿って、なにかの箱が積んである。彼はその箱を足掛りにして、中へおりてゆこうとした。するとそのとき、ふいに妙な音が起こり、充満している煙の中に火の舌が見えた。
音は「しゅしゅっ」というふうに聞えた。万三郎は反射的に身をひいた。
――こいつは火薬だ。
そう直覚したのである。
これまで、どうしても火薬の所在がわからなかった。それが此処だったのであろう。火の燃えあがるのが遅かった理由はわからないが、その音で火薬に相違ないと思った。
「――いけねえ」
われ知らず叫びながら、殆んど梯子をすべりおりた。
「煙硝に火がつくぞ」
と彼は絶叫した。
「みんな伏せろ、爆発するぞ」
そして自分もまるくなって走り、柵の処までいって地面に伏した。