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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「貴方がそんな、破滅だなどと仰しゃるのは違うと思います、貴方は無神流の師範として、立派に道場の持てる腕がおありだし、此処と縁を切ればいつでもその途がひらけるではありませんか、どうかそんなにつきつめたことをお考えにならないで、――」

「黙れ、黙れ黙れこの青二才」

半兵衛は歯を剥いて怒号した。

まっ赤な焔の光りを半面にあびて、彼の相貌はまさに悪鬼そのままにみえた。

「きさまは、このおれから、二つの大事なものを奪った、おれが生涯の夢にしていたものを、二つともおれから奪い取った」

「一つはこの陰謀ですね、が、もう一つはなんですか」

「刀を抜け」

「貴方の大事なもの、――」

云いかけて、万三郎はあっと口をつぐんだ。つい先夜、半兵衛は酔って、渡辺蔵人に対していろいろと怒っていた。そのなかで、

――あいつはかよどのを。

と云うのが聞えた。蔵人がかよをひきつけて、酒宴しているのを怒っていたらしい。

――そうか、かよさんか。

万三郎は初めて了解した。

新銭座の「ぶっかけ」の前の出来事からこっち、いつもかよの側には半兵衛がいた。それは、(誇張して云うと)まるで主人に仕える忠実な番犬のようにさえみえた。