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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

五

躯を張ってやれって」

「そこへおちるわねえ、女は」

「いいえ、おちるんじゃないわ」

おちづは強く首を振った。

「あたし女衒の男をやっつけるたびに気がついたの、男はあたしたち女を食いものにしたりなぐさんだりする、けれど、こっちがそのつもりになれば、男ほどたあいのないものはない、こっちの思うままにすることができるって、――そうじゃないかしら、姐さん」

「そうかもしれないわね」

松吉がふとからかうような眼を向けた。

「半ちゃんていう子をべつにすればね」

五

「あら、――姐さん」

おちづは赤くなった。

「いやだわ姐さん、半ちゃんとこの話とはまるっきりべつよ」

「だから半ちゃんはべつにして、って云ったでしょ」

「だっていやだわ」

ますますおちづは赤くなった。松吉は縫物を膝からおとし、ふとしんみりした眼つきでおちづを見た。

「あたしが云うのはね、女は結局のところ弱いもんだと云うことなんだよ、いまあんたは、そのつもりになれば男なんか手玉に取ってみせるって、云ったわね」

「あたし姐さんにその証拠をみせてあげられると思うわ」

「でも半ちゃんはべつなんだろう」

「姐さんったら」

「まあお聞きよ、――そりゃあね、女がいちどこうと肚をきめれば、男なんてこっちの思うままさ、鼻づらに繩を付けて曳き廻すことだってできるわ、でもそれは好きな人ができるまでのことよ、