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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

四

「あら、なぜですの」

「そんなことは事実じゃあないし、若い男女の口にすべきことでもないからです」

「事実じゃあないんですって」

「むろんですとも」

「では三郎さまは、かよを好いてはいらっしゃらないというんですわね」

かよはくるっと向き直った。

片手でひき寄せた薬箱をあけ、中から膏薬を取出すと、ごく自然な動作で万三郎を招いた。

「ちょっと此処までいらしって下さい」

万三郎はあがっていった。

諄いようだが、彼は単純であり、底抜けなほど人間を信頼する、かよはそれをよく知っていた。彼を翻弄することにかけては、誰にも負けない自信があったし、それはまたいいようもなく楽しいものであった。

「はいこれ、――」

そばへ来た万三郎に、かよはそう云って膏薬を渡した。じつに巧みな自然さである。万三郎はそれを受取った。

「どうするんです」

「貼り替えて頂くのよ」

そして、かよは着物の衿を左右にひらいた。

「う、――」

万三郎は妙な声を出した。

眼の前でぱっと、かよの胸があらわになった。雪白の肌が、いきなり彼の眼へとびこんできたようであった。彼は反射的に眼をそらしたが、なめらかに脂肪を包んだ肌の色と、たっぷりと豊かに、重たげな乳房のまるみと、そうして二つの小さな鴇色の蕾とが、そらした眼の裡にはっきりと残って、彼を狼狽させ、のぼせあがるような気持にさ