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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「此処で失礼いたします」

つなは切り口上で云った。

「花田のお兄さまからお言づけがあってまいりました、御用があるから来て頂きたいとのことでございます」

「そうですか、今日ですか」

「よければすぐにということでございました、おわかりでございますか」

「わかりました、しかし」

「おわかりでしたら帰ります」

つなはもういちど、ぐっと睨みつけた。

「たいそう失礼いたしました」

そしてくるっと踵を返した。

「どうしたんです、つなさん、まあいいじゃありませんか」

万三郎は広縁まで出ていって呼んだ。

つなは返辞をしなかった。かよもなにか云ったようである、が、その声は嘲笑のように聞えた。つなは殆んど夢中で、走るようにその屋敷から逃げだした。

――なんという憎らしい、いやらしい胸だろう。

外へ出るとつなは激しく首を振った。

――年は同じじゃないの、あたしの胸はまだこんなに小さいのに、あの人ときたらもうあんなにもきれいにふくらんで、――ああ憎らしい。

彼女は歩きながら、自分の胸を押えてみた。躯ぜんたいのひき緊っている彼女の胸は、それなりに魅力のあるふくらみと、豊かな弾力をもっていた。