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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
「そんな処でなにをしているんだ三郎」
万三郎は頭を掻いた。
「お帰りあそばせ」
つなはいそいそと休之助のほうへ近よっていった。休之助は弟に向って云った。
「もう兄上に会ったのか」
「いや、それがその、いま来たばかりなもんで、これからすぐ」
「いっしょに来い」
休之助は顎をしゃくった。
「すばらしい知らせがあるぞ」
「――なんです」
万三郎は気が重かった。かよにさんざん翻弄されたうえ、ぎゅっというほどつなに油を絞られ、云いたいことも云えず、誤解を誤解のまま残さなければならない。そう思うとうんざりするほど気が塞いだ。
しかし、休之助が低い声で云った次の言葉を聞くと、頭から水を浴びたように、はっと立停って、眼をみはった。
「おい三郎、中谷がやったぞ、紀州田辺で、中谷がみごとにやっつけたぞ」
三
徹之助の部屋へゆくと、休之助は坐るのももどかしげに話しだした。
その日、休之助は連絡する用があって、深川の井伊家下屋敷へいった。するとそこに、中谷兵馬からの手紙が来ていた。文面は簡単で、
――発見、始末完了。
というぐあいに書いてあった。
おそらく、休之助たちと同じように、貯蔵所かそれに類する場所を発見し、それをきれいに片づけたというのであろう。