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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
「まあ、よかった、それで安心しましたわ」
「いろいろ苦労させて済まなかったな」
「いいえそんなこと」
おちづは強く首を振った。にわかに顔色が明るくなり、眼も活き活きと耀いた。
「あたしたちなんてろくなお役にも立たなかったんですから、ただ半ちゃんが無事で、近いうちに帰るとわかれば、それでもうなんにも云うことはありません」
「私も今日は用があるので、これで別れなければならないが、――家は仲町だといったね」
「ええ仲町で松島屋っていえばわかります」
「わかった、いずれみんなと相談して、なんとか身のふりかたを考えるとしよう、決して悪いようにはしないからな」
「いいえ、そんな心配はいりませんわ、半ちゃんさえ帰れば、あたしたちちゃんとやってゆく段取りがついているんですから」
おちづはいさましく云った。
「ではどうも有難うございました、半ちゃんのこと宜しくお願い致します」
四
深川洲崎の升屋は、江戸における料理茶屋の開祖といわれて、しばしば貴人紳商の遊宴に使われる繁昌な店であった。
洲崎弁天に面した、堀沿いの広大な構えで、総二階の善美を尽した母屋に、大小三十余の座敷があり、ほかに別棟の数寄屋が三棟と、庭の一部には鞠場が設けてあった。