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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
う」
「では、――あの方は」
とかよはにわかに緊張した。
「あの方は、あのまま帰っていらっしゃらないんですの」
「だからまいったんですわ」
つなは唇をふるわせた。
「聞かせて下さいまし」
かよも膝を進めた。
「いったいあの方はどこへ、どんな事をしにいらっしゃいましたの」
「深川洲崎の料亭へ、渡辺蔵人の使いとして、ゆかれました」
「まあ乱暴な、――」
かよは顔色を変えた。
「どうしてそんな無謀なことをなすったのでしょう、升屋の会合はたいそう厳重で、一味の者でもなかなか出席は許されませんのよ、まるでこっちから罠へとび込んだようなものですわ」
二
「それでそのとき、あの方は独りでいらしったのですね」
かよの問いに、つなは黙って頷いた。
「なんということでしょう」
かよは両手を打ち合せ、それを固く握り緊めた。つなよりも昂奮し、いたたまれないというふうに立って来た。
「それでいったいどうなさるおつもりですの、観音谷の事もあるし、ぐずぐずしていると取返しのつかないことになりましてよ」
「ではかよさんは本当になにも御存じないんですのね」
「わたくしがなにか知っていると思っていらしったの」