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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

を愛してあげ、幸福にしてあげられるのは決してあなたじゃあありませんわ」

「それは自分だというわけね」

つなは冷やかな眼で、軽侮に耐えぬもののようにかよを見、そして唇で笑った。

「かよさんなら万三郎さまを仕合せにしてあげられるというのね、ほほほ、試してごらんなさい、わたくし拝見させて頂くわ」

「できないと思うの」

「わたくしあなたと張合うつもりなんかありません、あなたに自信があるならやってごらんになればいい、わたくし黙って拝見していますから」

「その言葉を忘れないでちょうだい」

かよはそう叫んだ。つなは顔をそむけ、相手の脇をすりぬけて、そこを去った。

――冷たくて情のない女。

かよの言葉が耳の中で喚くように聞えた。

――高慢で見栄坊で負け嫌い。

――訓戒したり叱ったり、やりこめたりすることはできるだろう、しかし愛することはできない。

ひと言ひと言が、棘でも刺されるように、するどい痛みで胸を突刺した。

「――ああ」

と歩きながらつなは呻いた。

「なんという女だろう、なんといういやな、下品な女だろう」

四

和泉屋の寮へ帰るまでつなの昂奮は鎮まらなかった。

――あの人の云ったことは本当かもしれない。