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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

徹之助は痩せていた。

彼は休之助にも万三郎にも似ていない。色が黒く眉が太く、口が大きかった。太い眉をしかめ、大きな口をぎゅっとひき緊めるのが、彼の癖であった。――二人の弟が母親似であるのに対し、彼ひとりは父親似であったが、――そういう表情をすると、機嫌の悪いときの父におどろくほどよく似るのであった。

「それは偽者だ」

徹之助は渋い顔をした。

「あとから来たその女は偽者に違いない、おまえがなにか知っているかどうかを探りに来たのだ、しかし、どうして、増六におまえのいることを嗅ぎつけたろう」

「これが預かった包です」

万三郎はつなから預かった風呂敷包をそこへ出した。

「つなという娘はそれから来なかったのだな」

「昨日までは来ませんでした」

「――ふん」

徹之助は不機嫌に首を傾げた。

「なにかあったかもしれない」

「するとあれですか」

万三郎は兄を見た。

「あとから来たのが偽者だとすると、甲野さん一家が無事だというのは嘘ですか」

「むろん嘘だ」

「ではつなさんのほかはみんな」

「休之助も難をのがれた」

徹之助は云った。

「あの火事の二日まえに、私がやられそうになったのだ、どんな方法をとるかわからないが、城中で取詰められるという密報があったのだ、そのとき私は大目付の役部屋へ入ったところだったが、――」