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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「こっちは空地か」

「いいえ三方とも堀で、堀の北側は館屋の木場、西側は山屋の木場、こっちの東だけが、堀を越すと空地になっています」

「――よくわかった」

徹之助はその図を取って、

「休之助、今夜やろう」

と云った。休之助はさも意外そうに兄を見たが、唇には快心の微笑がうかんでいた。

「しかし甲府のほうを一刻も早く」

「心にもないことを云うな」

徹之助は渋い顔をした。

「おまえは初めから三郎を助けたいと思っていたんだろう、ごまかしてもだめだ、おれの口から云わせるためにことさら乱暴につなを叱りつけた――わかっているぞ」

「そんな、決してそんな」

休之助は弁明しようとした。

つなは顔を赤らめ、ほっとしたように、そしてひそかに詫びるように休之助を見あげた。

「もういい、弁解はたくさんだ」

徹之助が云った。

「それよりまず、手順を考えよう、刻は夜半過ぎがいいだろう、弁天社の海側へ舟をまわして置く、それから、西側の堀に沿って塀を越え、――一手は裏門で騒ぎを起こすがいいな、石倉へは三人、おまえと、斧田、それから太田嘉助は一刀流を相当にやるから、太田を頼んで」

「御案内はあたしがします」