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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「火繩に火をつけろ、鍵をよこせ、おれはもう堪忍がならない、おれはこいつを殺してやる、えい畜生、おれはもう」

「まあ待て、そんなことを云ったって」

「黙れ黙れ、鍵をよこして火繩をかけろ、おれはこいつを」

「いけない、そんな乱暴な」

「ええよこせ、邪魔をするな」

「待てといったら、――あっ」

「あっ誰だ」

二人の権兵衛が同時に叫んだ。そして、ほんの一瞬間しんと物音が絶えた。

ほんの一瞬間、いままでの騒ぎがぴたっと止り、異様な沈黙がひろがった。が、次の刹那に、二人の権兵衛が悲鳴(こんどこそ正しく)をあげた。

「――曲者だ」

「鳴子を引け」

万三郎もあっと声をあげた。

――助けに来てくれた。

そう直感したのである。

彼はふるい立った。そうして、仕切戸に向って、その若く逞しい躯を、力いっぱい叩きつけ、そうして絶叫した。

「休さん此処にいるぞ」

四

二度、――三度。

巌も砕けよとばかり、躰当りをくれた。仕切戸は少し軋んだが、樫材の頑丈な造りで、もちろん壊れるようなけしきは微塵もなかった。

「休さん、此処だ此処だ」

喉いっぱいに叫んで、それから耳を澄ませた。

仕切戸の向うでは荒々しい足音がし、二人の権兵衛の怒号に続いて、休之助の力ある声が聞えた。