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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

あの声の主はどうしたか。

その男は黒い覆面をし、黒装束で、飛鳥のように闘っていた。松明の光りを映して、その刀がきらりきらりと閃き、その一閃するたびに敵を倒していた。

「えい、えいっ、やあっ」

腹を貫くような掛け声と、倒れる敵の悲鳴とが、まるでその腕の冴えを証明するかのように、あたりを圧して響いた。

敵の囲みは乱れた。

――誰だろう。

万三郎には誰だか見当がつかなかった。

「こっちだ、三郎」

休之助が叫んだ。

そこに木戸があった。太田が走って来、あとから斧田又平も駆けつけた。

「早く、なにをしている、三郎」

「――あの人が」

「ばか者、いそげというんだ」

かれらは木戸をぬけた。あとから五六人、追って来た。太田嘉助が足を返して先頭の二人を斬った。

「もらった!」

と景気のいい声をあげ、そのとおり、鮮やかに左右へ斬って取った。すると、残った四五人はばらばらと逃げた。

休之助たちは母屋の脇を走りぬけた。

母屋はひっそりと眠って、(もちろんその騒ぎを知らない筈はないのに)漏れてくる灯のけはいもなかった。

――大丈夫だろうか。

万三郎は堀のところで振返った。庭のほうではまだ大きな掛け声と、悲鳴や怒号が聞え、松明の火の揺れ動くのが見えた。