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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「しかし兄さん」

万三郎はいきごんで云った。

「偽者のつなが増六へ来たことを考えて下さい、増六に私がいることを誰と誰がしっているかしりませんが、まず本当のつなさんに指を折ってもいいでしょう、そのつなさんが消息を断ったとすれば、かれらがつなさんを捉まえて、そうして増六をつきとめたという想像はできませんか」

「想像はどうにでもつく、おまえの考えは当っているかもしれないが、しかし、つなはしっかりした娘だ」

徹之助は冷やかに云った。

「つなのことはつな自身に任せるがいい」

「こうなると聞きたいですね」

万三郎はひらき直った。

「いくらしっかりしているといっても、あの人は女でしょう、まだ二十にもならない娘が、どんな危険に曝されているかもしれないというのに、そんな冷淡なことを云って済ましていられるのは、どういうわけですか」

徹之助は黙っていた。黙ってあの(つなの預けた)包を静かにあけていた。万三郎はすっかり三男坊のじがねをあらわし、むきになってつめ寄った。

「そればかりじゃない、私を長崎くんだりから出発させ甲野さんのお二人を焼死させた、――いったいこれはなんのためです、どんな必要があってこれだけの犠牲を払うんです、兄さんたちの仕事というのは、いったいどれほど重大だというんですか」