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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

観音谷このかた、すっかり諦めてはいたけれども、今、眼の前でかよが、他の男を案ずるあまり顔色を変えるのを見ることは、耐え難い苦痛だったのである。

「大丈夫、心配はない」

と半兵衛は云った。自分の胸のするどい痛みを、けんめいに抑える声であった。

「敵の三分一は斬死に、残りは鳥沢の番所へ捕えられた、そうして、花田さんたち四人は、目的の地へ乗込んでいったそうです」

「目的の地がわかりましたの」

「わかったから、私もこのとおり追って来たんです」

「――もういちど訊きますわ」

かよはじっと半兵衛を見た。

「――なんのために、貴方があの方のあとを追うんです、あの方をどうしようというつもりなんですか」

「ああそうか、そうですか」

半兵衛は悲しげに頷いた。

「貴女はなにも知らないんだな、そうか、私と花田さんのことを、――よろしい話しましょう、そうすればわかってもらえる筈だ」

そして彼は話した。

四

かよは黙って聞いていた。

半兵衛はうまく話せなかった。自分の気持をうまく話せないのが、いかにももどかしそうであった。

しかしかよは了解した。

彼が万三郎の温たかい思い遣りに対して、また、そんなにも彼がおちぶれ、敵味方となっていながら、剣士として尊敬してくれることに対して、――ついに甲をぬぎ、半兵衛それ自身をとり戻した。