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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

半次とおちづは赤くなり、眼を見交わしながら、座敷のほうへと戻った。半次は万三郎の隣りへ坐り、おちづは給仕の手伝いにまわった。つなやかよが花嫁衣装を脱いで、徹之助の妻の幾代と共に、酒肴を運んだり酌をしたりしているので、おちづも見てはいられなかったのである。

「深川一の名妓になるんだそうだからな」

兵馬が笑いながら云った。

「そうなるとおれのような旗本の四男坊には高峰の花だから、いまのうちに酌をしてもらうとしよう」

「あら、皆さんならお金は頂きませんわ」

おちづもきれいにやり返した。

「此処にいる皆さんなら、ほかのお座敷を断わってもお酌をしにあがりますわ、どうぞごひいきに」

四

おちづの巧みな応対で、座も賑やかになるし、半次もみんなの話題の中心になった。

万三郎はまだ「岡さま」のことが気になるので、おちづが酌をしにまわって来たとき、その後のようすを訊いてみた。しかし、あれ以来ずっと、松吉も逢っていないという。

「月々のお手当は来るんです」

とおちづは云った。

「いつも旦那の来る、黒江町のちづかというお茶屋さんへ、定って二十日の日にお手当が届くんですけれど、使いの人はそのたびに変っているのと、どこの誰から頼まれたかも知らないんですって」