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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
前がないから大砲か鉄砲かわからないが、とにかくなにかの合金を鋳るわけでしょうからね」
「おまえの云うとおり、休之助はそこに気がついたんだ」
徹之助は云った。
和泉屋の話を聞いたとき、休之助はそのイスパニア語の手紙のことを思いだした。榊原主膳が持って来た訳文は、そのまま机の抽出の中へしまって置いたのだが、和泉屋の話を聞いてから、もういちど出して読んでみた。
――おかしい。
休之助には暗合とは思えなかった。
偶然の暗合と思えない理由が、ほかにもう一つあったのである。それは「赤い雀」の問題であった。
「さっき中谷が赤い雀を捕って来たろう」
「よく見なかったですが」
「普通の雀よりずっと小さい、そして全身が鮮やかに赤いのだ、それをこの夏のはじめ頃に、お浜屋敷の庭で休之助が見た、むろん生れて初めて見るのだが彼は南方の異国に紅雀という小鳥のいることは聞いて知っていた」
「私も聞いたことがありますよ」
「このイスパニア語の断簡もお浜屋敷の中で拾ったのだ」
万三郎はえっと云った。
――お浜屋敷。
徹之助は云った。
「これで彼が私のところへ来たわけがわかるだろう、イスパニア語の手紙と、紅雀、鋳造技術のわからない偽造の二朱銀、――しかも手紙の文言は、あまりに重大な意味をもっている」