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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
三
「偽装のためにですね、一部は本邸へ入れるでしょう、しかしその他の大部分は他へ運びますね、なにしろ御三家の威光があるから便利です。毎年の例で日光廟へ納めるというのも怪しめば怪しめるでしょう」
「よし、それをつきとめることにしよう」
徹之助はひろげた物を片づけて、小机の上の鈴を取り、強く五たび鳴らした。
「紀尾井坂(紀伊家の本邸)へ人を入れるにはつなが適任ではないでしょうか」
「消息がないんだ」
「――どうしたんです」
「十日ばかりまえから音信が絶えている、どこかへ誘拐されたとしか思えないんだが」
そこへ人々がやって来た。
三
集まって来たのは八人で、林市郎兵衛と中谷兵馬と、万三郎の三人がいなかった。
「三人はどうした」
「林は今日は来ませんし、花田さんと中谷は外出です」
「いっしょにか」
「花田さんは存じませんが」
と斧田又平が云った。
「中谷はつい今しがた、誰か呼びに来た者があって出ていったようです、ちょっとでかけると云っただけですから、すぐ帰って来るだろうとは思いますが」
「誰か呼びに来た、――」
徹之助は首を傾げた。
万三郎が毎日ぬけ出すことは、徹之助はもう知っていた。