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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
徹之助の妻(幾代)と子(松之助)は、大目付の者に拘引されたまま、今日までその所在がわからなかったのである。――みんなさっと緊張したが、徹之助は無関心なようすだった。
「どこだ、――」
と休之助が性急に訊いた。
「例の小田原町の河岸にある紀州屋敷の中です」
「やっぱりそうか」
休之助が呻くように云った。
彼は早くからそこに眼をつけていた。芝の浜屋敷と同様、小田原町の屋敷も海に面している。それで始めのうちは小田原町のほうに見当をつけ、船宿の増六を溜りにして、ずっと見張りもしていたし、みんなの会合も増六でやっていたのであった。
「どこから聞き出したのだ」
徹之助が静かに反問した。
「ひじょうに偶然なんですが」
と市郎兵衛が答えた。
「私の妹の友人が最近あの屋敷へ勤めに入ったのです、日本橋の袋物屋の娘で、妹とは仲の良い友達ですが、それが妹を訪ねて来て、母子二人の者が厳重に匿まわれている、という話をしたのです」
「それだけではわからないではないか」
「いや、お子さんが花田という姓を仰しゃるのを聞いたのです、お二人は長屋の一棟にいて、二人の老番士と、一人の老女がお世話をしているそうですが、お子さんだけときどき庭へ出て老女と遊ぶのです、――妹の友達はもちろんなにも知りはしません、なにかお咎めの筋があって、押込められているのだと思っ