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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

女は急に暴れだした。

本当に苦しくなったらしい、下半身で必死にもがき、噛みつこうとした。裾が乱れて、太腿までむきだしになり、その裸の足で畳を掻きったり叩いたりした。

万三郎は力まかせに押えこみ、片方の膝を女のみぞおちの上へ当てた。

「おれの罪じゃないぜ、おまえがおれをこんな気持にさせたんだ、こんな狂暴な恋の虜にさ、そこでひとつ云ってもらおう、つなはどこにいるんだ」

膝へぐっと力をいれた。

「苦しい」

女は唸った。

「もっと苦しくなるぜ」

「あたしを、どうなさるの」

「云えばいいんだ」

「知りません」

押えこまれているので、女は高い声がだせなかった。自分の腕で塞がれている口から、途切れ途切れに答えるだけだった。

「知らないなんて云ってとおると思うのか、増六へつなと名乗って来るからには、本当のつながいないことを知っていたからさ、そして、もう自分の正体がばれたと思ったから、こんどは色仕掛けときたんじゃないか」

「本当に知りません」

女は喘ぎながら云った。

「肋骨が折れるぜ」

「――あっ、やめて」

三

やめて、という呻きに、万三郎はひょいと力をゆるめた。

その叫びは絶息直前のもののように聞えた。