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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

七

「いったい誰です」

万三郎は云った。

「貴女の保護者というのはなに者です。貴女がもし本当に私を好いているなら云ってくれるでしょう、それはいったいどんな人間なんです」

「そんな怖いお顔なさらないで」

かよは万三郎に凭れかかった。

「ねえ万三郎さま、もういちどさっきのように抱いて下さいましな、ぎゅうっと、息の止るくらいきつく、ねえ」

七

女は身もだえをしながら、両手で万三郎を抱き、そのままうしろへ倒れようとした。

万三郎はふり放そうとしたが、柔軟な女の躯は吸いつくように絡み着いて、危うくいっしょに倒れそうになった。

そのとき二人のうしろで、

「三郎さんもういいでしょう」

という声がした。

いやにおちついた、静かな含み声であった。かよはぱっと身を起こした。火にでも触ったような、非常にすばやい動作だった。

そこに中谷兵馬が立っていた。

万三郎はおうと云った。さすがにぐあいが悪いらしく丹前の衿を直しながら、この場の弁解をしようとした。

「迎えに来たんですよ」

兵馬は頷いた。弁解には及ばない、という頷きかたで、女のほうに振向いた。

「声を立てないでもらいたいな、万三郎さんは婦人にやさしいが、おれは女嫌いのほうだからな」