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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
とかよも云った。
これもそのとおりであった。かよもまたつなをよく識っていた。万三郎ひとりが、みれんな醜態を演じたわけで、彼としては(本当のところ)穴にでも入りたいような心持であった。
――結城へいったら、つなに嗤われないようにしろ。
徹之助はそう念を押した。万三郎は一言もなかった。はまぐり町を出て来てからも、かよの告白を思いだしては、運命の皮肉なむすびつきに溜息をつき、つなの決断と勇気を思っては、感嘆の吐息をつくばかりだった。
「茨木屋でございます、どうぞお泊りなさいまし」
こう云いながら、突然、一人の女が万三郎にとびついて来た。
熊谷の宿に入って二丁ばかり来たところであった。もう日は昏れかかって、町の家々には灯がつきはじめていた。
「おいよせ、定宿があるんだ」
万三郎は女を押しのけようとした。女は二十一二で、白粉をまっ白に塗っているし、髪油もつよく匂っていた。普通の宿屋ではないと思ったからであるが、女は逞しい腕で、しっかりと万三郎の手を掴み、
「お定りなことを仰しゃってもだめですよ、あなたのいらっしゃるのを待っていたんですから、さあじらさないで早く」