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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

――斧田又平。

それは、一日まえに結城へ立っていった、あの斧田又平であった。

着物も袴もずたずただし、髪は解けているし、顔は泥と血にまみれていた。両手をうしろにまわして縛られ、どこか挫きでもしたのか、少しびっこをひいていた。

万三郎は道の左右を見た。

強くなった北風で、つぎつぎに埃が巻き立つから、よく見とおしは利かないが、遠くに馬子と二三の旅客らしい人影があるほか、すぐ邪魔にはいるような者は見えなかった。

――よし。

彼は頷いて、静かに本道へ出ていった。道の右は用水堀、左は少し水の溜まった苅田である。万三郎は一団のうしろから、少し早足で追いぬいてゆき、前へまわったとたん、いきなり振向いて刀を抜いた。

「おーい、五人はそっちから掛れ」

刀を抜きながら、列の後尾のほうへ叫びかけた。もちろん、うしろにも人数がいるぞ、と思わせるためで、叫ぶより早く列の中へ斬り込んだ。

かれらはまったく不意をつかれた。そんな事が起ころうとは、夢にも考えてはいなかったらしい。とつぜん前後から挾撃されたと思うと、たちまち混乱して崩れたった。

「散るな、散るな」

指揮者とみえる男が絶叫した。