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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
峰打ちをくらった二人は倒れたままである。万三郎は岐れ道のほうへと戻りながら、
「どうしたんだみんな」
と役人たちに呼びかけた。
「逃げるのか、それとも掛って来るつもりか、おい、そこにいる大将、おまえが責任者なんだろう、どうするつもりだ」
「黙れ、神妙にしろ」
逆上した声であった。代官所の同心といった恰好の、三十五六になる男だったが、すっかり度を失ったらしく、十手を持った手が見えるほど震えていた。
「神妙にするのはそっちだ」
万三郎は笑いながら云った。
「おれはまだ一人も斬ってはいない、そこに倒れているのは峰打ちだ、しかしこれからは斬るぞ、いいか、こんど掛って来るやつは斬る、それを断わっておくぞ」
少しずつ道を戻りながら、向うから馬を曳いて馬子の来るのを見た。戻り馬らしく、から馬である。まだこっちの騒ぎがわからないとみえ、埃に追われながら、ぶらぶら暢気に近づいて来た。
万三郎が進むと、そっちにいる三人が追って来た、三者が睨みあいのまま、岐れ道のほうへじりじりと移動するのであった。
「手は廻っているのだ」
同心らしい男が叫んだ。
「逃げられはしないぞ」
「慥かにそうか」