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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
そうして町の裏の、小さな明神社のうしろで包をあけ、継ぎはぎだらけの野良着を着、草鞋をはき、筍笠をかぶった。脱いだ物を包んで腰に結いつけ、鎌を持つと、そのまま野良ばたらきに出た百姓娘の姿になった。
つなは古木邸の東側へまわり、そこにある薪山の中に身をひそめて、屋敷のようすを監視した。
薪山といっても二三段ばかりの小さなもので、少しばかりの松と枯れた雑木林しかなく、周囲はずっと畑続きだから、見張りにも都合はいいが、人に発見されるおそれも多分にあった。
つなは雑木林の中の、茨と灌木の茂みに躯を隠して、日の昏れるまで動かずにいた。
あたりがしだいに暗くなり、畑にいた農夫たちも帰ってしまった。空いちめんに、星が美しく光り始めると、にわかに気温が下って、足のほうから痺れるように寒くなってきた。そして、枯木林の枝で鳴いていた小鳥の声も、すっかり聞えなくなったじぶん、古木邸の裏門のあたりから、かすかに人や馬の動くけはいが伝わって来た。
つなは緊張した。
――やっぱり想像が当った。
暗いのでもう隠れている必要もない、林から出て、薪山の端の笹藪のところまでおりた。
裏門から出ると道は二筋に岐れている。