轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

三度の食事と、おかわの出し入れ。そのとき以外は戸口に錠がおろされるし、老女も階下へおりていった。

「もう江戸から来た頃だわ」

つなはそっと呟いた。

「葛西屋にはきっと手が廻ったに違いない、江戸から誰が来るかわからないけれど、葛西屋へ泊れば捉まってしまう」

それは見えるようであった。

「誰が来たかしら、もしかしてあの方だったら、――そしてもしかしてあの方が捉まったとしたら、――」

つなは身ぶるいをした。

万三郎の俤は明瞭ではない、会ったのは一度きりである。それもほんの短い時間、増六の二階のうす暗い行燈の光りで、おちつかない用を兼ねての対面だった。

――やがてこれが自分の良人になる人だ。

そのときつなは自分にそう云った。半年以上もまえから、彼が自分を欲しがっていることは聞いていたし、自分もそのときの来るのを、ひそかに待っていた。

――これがその人だ。

眼の前にいる万三郎が、はっきり婚約こそしないが、自分の良人になる人だと思った。そうしてそれだけで、(切迫した事情のために)あわただしく別れたのであった。

はっきりした眼鼻だちであった。切れあがった口尻や眼のあたりに愛嬌があった。