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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

二人はひと晩だけ泊めてもらうつもりであった。

――主家を浪人したが、侍では仕官の口もないので、なにか商売にでも取付きたいと思って旅に出た。

そういうような身の上話をすると、友吉老人にすっかり同情されてしまった。

――それならこの上の処へ炭船が着くから、炭でも売ってみたらどうか、こんな狭い小屋だけれども雨露だけは凌げる、よかったら此処で寝泊りをして、稼げるかどうかやってみるがいい。

人の好さそうな老人の、心からの親切に、少なからず良心は咎めたが、注文したような条件なので、そのすすめに従ったのであった。

二人で炭を売るのはまずい。又平のほうは病気あがりだという口実で、おもに古木邸のまわりを、気づかれない程度に、見張って歩くことにした。

炭売りを始めて五日。

幸運にも古木家の下男と知りあいになれたが、同時にかよと云う大敵にもめぐりあった。万三郎にとって、かよは大敵の中の大敵である。「和幸」での息苦しい愛の告白、ねっとりと絡みついてきた、みだらで燃えるような熱い肉躰、――それらはいまでも、生ま生ましい感覚として残っていたし、彼にはとうていかなわない印象であった。